2025年8月9日(土)、滋賀県立美術館(以下、「当館」)で、子どもたちが「自分たちが行きたい美術館」について語り合うワークショップ「教えて!もっと行きたい美術館」を開催しました。公募により、県内の小学生と中学生、計23名のKIDS CREATORにお集まりいただきました。企画運営は、放課後NPOアフタースクール様、クラブアトラクション様、グラフィックレコーディングは大道レイチェル様、撮影は成田舞様(Neki.inc)にご協力いただきました。
現在、検討を進めている当館の整備プロジェクトの目指す姿「子どもも大人も来たくなる未来をひらく美術館」の実現に向けて、子どもを参加対象として、館内見学やグループワーク、発表などを通して、当館をより身近に感じてもらいながら「もっと行きたい美術館」を考えていただきました。
午前は小学生、午後は中学生を対象に、二部構成で実施しました。
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「教えて!もっと行きたい美術館」開催レポート
滋賀県立美術館でKIDS CREATORワークショップを開催
―第1部 小学生
進行を務めたのは放課後NPOアフタースクールの成田さん。「今日は“自分が行きたいと思う美術館”を考えてみよう」と呼びかけると、小学生KIDS CREATORは少し緊張しながらもうなずき、静かな期待感に包まれた雰囲気で午前の会が始まりました。
最初の質問は、「みんなが思う美術館のイメージって?」。
「絵を見るところ」「静かで落ち着くところ」「しゃべっちゃいけない場所」「作品に触れてはいけない」「ちょっと大人っぽい」「走ってはいけない」──。
子どもたちの素直な印象が次々と飛び出し、会場は笑い声に包まれました。
続いて、当館の𠮷川エデュケーターの案内で館内を見学。展示室や中庭、ギャラリーなどを巡りながら、「この場所はどんな気持ちになる?」「どこが好き?」と問いかけが続きます。「光がきれい!」「木のホールがあったかい」「外が見えるのがいい!」──子どもたちはスケッチシートに思いついた言葉をどんどん書き込みました。𠮷川エデュケーターの解説に真剣に耳を傾ける姿もあり、普段なかなか気がつかない美術館の細部に目を輝かせていました。
見学を終えると、3〜4人ずつのグループに分かれて意見出しの時間です。
「美術館の中で、こんな風に過ごせたらいいなと思ったことは?」「公園も美術館ももっと魅力UPするには?」──2つの問いをもとに、付箋とマーカーを手に自由に発想していきます。
各テーブルからは、想像力あふれるアイデアが次々と飛び出しました。「すべりながら作品をみれる滑り台がほしい!」「プールに入って絵を見たい」「布団に寝転んで天井に絵を映したい」「美術館で宿題をしてもいい場所があるといい」「お菓子を食べながら話せるソファがほしい」など、“遊び”と“居場所”が融合した発想が目立ちました。
テーブルファシリテーターの大学生ボランティアたちは、「それいいね!」「もっと詳しく教えて!」と声をかけながら、模造紙に意見を書き込みます。
グラフィックレコーダーの大道レイチェルさんも、子どもたちの言葉を鮮やかなイラストで可視化。時間が経つにつれて、模造紙も子どもたちの表情もどんどんカラフルに変わっていきました。
最後の発表では、「スライダーで公園に行けたら最高!」「家族と来ても楽しめるカフェがほしい」など、ユーモアと想像力に満ちた発表が続き、館内には笑い声と拍手が響きました。最後に当館の保坂ディレクター(館長)からは、参加いただいたことへの感謝とともに「10年後ここに来て、スライダーなど今日出してもらったものが実現していたら「これ僕・私のアイデアだ!」といってね」とメッセ―ジを伝えました。
実施後のアンケートでは、子どもたちから「アイデアをつかってほしいです」「今日みたいなイベントをたくさんしてほしいです」といった期待の声をいただきました。
―第2部 中学生の回
午後に実施した中学生の回も、午前の小学生の回と同様に、放課後NPOアフタースクールの成田さんの進行のもとスタートしました。午前と同じく「今日は“自分にとって行きたい美術館”を考えてみましょう」という呼びかけに、中学生KIDS CREATORは静かにうなずきながら、それぞれの考えを巡らせている様子でした。小学生の回よりも落ち着いた雰囲気の中で始まった午後は、これまでの美術館体験や日常との距離感を踏まえながら、美術館をどのように捉えているのかを言葉にしていく時間となりました。
最初の質問は、小学生の回と同じく「みんなが思う美術館のイメージって?」。
「静か」「きちんとして行く場所」「制服を着て行くイメージ」「触ったらダメ」「少し入りにくい」「少し遠い」といった声が挙がる一方で、「建物の見ごたえがある」「オシャレ(ライトなど)」「心育む場所」といった意見も聞かれました。
これまでの経験をもとにした現実的な印象と、美術館の価値を肯定的に捉える見方の両方が語られ、参加者一人ひとりの中に複数のイメージがあることがうかがえました。
続いて、当館の𠮷川エデュケーターの案内による館内見学を行いました。午前と同じルートを巡りながら、「ここはどう感じる?」「自分たちが使うとしたら?」と問いかけると、中学生KIDS CREATORは立ち止まりながら空間を見渡し、自分なりの視点で考えを深めていきます。
「しゃべってもいいんだ」「展示室ごとに明るさが違う」「外が見えるのがいい」「ここでは食べてもいいんだ」といった声も聞かれ、実際に場を体験することで、当館への印象がより明確になっていく様子が見られました。
館内見学を終えたあと、午前と同じように、グループワークに取り組みました。まずは一人ずつ付箋に思いついたことを書き出し、机の上に並べていきます。
最初は静かに作業していた中学生KIDS CREATORも、テーブルファシリテーターの大学生ボランティアの「それ、いいね」「これはどう?」との掛け合いをきっかけに、たくさんの意見を交わすようになっていきました。
「触れたり体を動かしたり、作品の中に入った感じがする体験ができたら面白そう」といった声に、「自分で動かして見え方の違う作品を作れたり、実際に描き加えたりできたらもっと印象に残りそう」と別の意見が重なり、どんどん考えが広がっていきます。
話し合いの途中で、「公園の中にある美術館」の視点が投げかけられると、参加者は「すべり台で美術館から公園まで行ける!」「公園を移動するときからアートがみられる」など公園を美術館と一体として捉える考えが共有されていきました。また、「たとえばめっちゃでかい椅子が美術館の上に載っていたり、遠くからでも一目見て美術館だとわかる外観」といった意見もあがりました。
発表の時間には、少し緊張した様子でも、それぞれのグループが自分たちの考えを言葉にして伝えていきました。「一日スタッフ体験をしてみたい」「作品を作った人の歴史がわかる映像とか資料もみてもっと深めたい」といった発言に、うなずきながら耳を傾ける参加者の姿もあり、会場には落ち着いた一体感が生まれていました。
各グループの発表後には、当館の保坂ディレクター(館長)から、「皆さんの意見は、大変勉強になりました。今すぐにでも取り組めるものもありそう。次来た時「美術館ちゃんとやってるか?」とチェックしてくださいね!」と語りかけると、中学生KIDS CREATORは期待の眼差しを向けていました。
実施後のアンケートでは、「今日、私たちが出した意見がどのように反映されているのか」「自分たちの意見が実現されたらいいなあと思うし、もっと魅力あふれる滋賀県美になってほしいです」といった声をいただきました。
今回のワークショップは、「もっと行きたい美術館」を子どもたちの視点から探る初めての試みでした。
当館では、今回寄せられた意見や視点を今後の整備プロジェクトにできる限り反映していく予定です。また、今後もこういったワークショップの機会を積極的に設けていきたいと考えていますので、今回参加できなかった方にも是非ご参加いただけると幸いです。
「子どもも大人も来たくなる 未来をひらく美術館」をめざして──。この日のワークショップは、未来へと続く小さくも大きな一歩になりました。
開催日:2025年8月9日
主催:滋賀県文化スポーツ部文化芸術振興課美の魅力発信推進室・滋賀県立美術館
企画運営:特定非営利活動法人放課後NPOアフタースクール・CLUB ATTRACTION(クラブアトラクション)
グラフィックレコーディング:大道 レイチェル Daido Rachel
撮影:成田 舞(Neki inc.)