1984年に滋賀県立近代美術館が開館した時、初代館長を務めた上原恵美は美術館のモットーとして、「小さくともキラリと光る、日本中に発信する美術館」「知的好奇心に応える場」「あなたの応接間に」の3つを掲げました(ちなみに当時上原は「公立美術館初の女性館長」としてマスコミに盛んに取り上げられました)。
2021年1月1日に第13代目館長に就任した保坂健二朗は、同年4月1日に組織の名称が滋賀県立美術館と変わったのにあわせて、目指すべき美術館の姿を「公園のなかのリビングルーム」「リビングルームのような美術館」としました。あらたまった空間から、くつろぎの場所へ。美術館は、時代とともに変化していくのです。
私たち滋賀県立美術館は、1984年に滋賀県立近代美術館として開館しました。
収蔵点数は2024年3月現在で2,790件と県立の美術館としては比較的小さい規模ではありますが、日本画家の小倉遊亀や染織家の志村ふくみのコレクションは国内随一を誇っています。また、マーク・ロスコやロバート・ラウシェンバーグなど、いわゆる戦後アメリカ美術を代表する作家の良作を収蔵していることでも知られていますし、2016年からは、アール・ブリュットの作品の収集もスタートさせました。教育普及活動でも、開館当初から実施しているワークショップやアートゲームを用いた鑑賞教育などの先進的な取り組みは、全国に誇れるものです。
改修工事のための一時休館を経て、2021年6月に再開館するにあたり、私たちは「かわる、かかわる」をコンセプトに歩みだします。まず、私たちは時代や傾向を限定することになる「近代」を、館名から外します。今日の美術館のミッションは、「人がつくった様々なものに触れることを通じて、社会や環境の多様性をより深く感じられる場をつくること」にあると考えるからです。滋賀県立美術館は、そのミッションを実践していくために以下のことを行っていきます。
滋賀を中心にして、障害のあるなしに関係なく、また、ジェンダーバランスにも留意しながら、創造の場を支えます。その上で、「アートって、人間にとってなんなんだろうか」という問いを考えたくなるような展示を実施するとともに、これまで以上にユニークなコレクションをつくりあげていきます。
「滋賀っておもしろい!」と皆が言いたくなるように、県内の個人や企業・団体の協力を得ながら、地域の多様な魅力をリサーチして広く発信します。また、県民を中心に、子どもから大人まで、ビギナーから学者まで、ユニバーサルの理念のもとに、一人ひとりの学びに貢献するプログラムを実施します。
これら「創造(Creation)」「問いかけ(Ask)」「地域(Local)「学び(Learning)」の4つ(CALL)を軸にすることで、滋賀県立美術館は、これからますます変動していく社会に対しても、柔軟にかわりながらかかわり続けることができるはずです。そして、この「つねにフレッシュなミュージアム」というモデルを滋賀から発信し、今後の展開へと結びつけたいと考えています。
美術館の活動の根幹となる調査や研究の成果に基づいて、以下の事業を行います。